
ChatGPTの応答を待つ時間が長いと感じたことはありませんか?実は、その待ち時間の原因の多くは、使用しているチップの設計にあります。ゲームをプレイするためのグラフィックカード(GPU)でAIを動かすのは、F1レーシングカーで買い物に行くようなもの。速いけれど、本来の用途とは違うため効率が悪いのです。
今回ご紹介する3社は、まさに「AI専用のマシン」を作ることで、この問題を根本から解決しようとしています。簡単に言えば、SambaNovaは「変形ロボット」、Cerebrasは「巨大な力技マシン」、**Groqは「無駄ゼロの最速ランナー」**のようなアプローチでAI処理を革新しています123。
SambaNova:「変形ロボット」のような柔軟性を持つAIチップ
なぜ「変形」が必要なのか?
「画像生成AIを朝に使って、午後は文章生成AIに切り替えたい」。こんなニーズに対応したくて、スタンフォード大学出身のエンジニアたちが2017年に設立したSambaNova。彼らが開発したRDU(再構成可能データ処理装置)は、まるでトランスフォーマーのように、用途に応じて内部構造を変化させます。
どうやって「変形」するのか?
簡単に説明すると、SambaNovaのチップは「レゴブロック」のようなもの。同じパーツを使って、車を作ったり、飛行機を作ったりできるイメージです。
数字で見る凄さ:
つまり、これまでビルの1フロア全体が必要だったAIシステムが、会議室1つ分のスペースで動くようになったのです。
実際に何ができるのか?
驚異のマルチタスク能力:
- 数百種類のAIモデルを同時にメモリに保存
- AIモデルの切り替え:0.000001秒(マイクロ秒単位)
- GPUより100倍高速なモデル切り替え6
具体例:ChatGPTのような文章生成
- 通常のChatGPT:1秒に15文字程度
- SambaNova使用:1秒に200文字以上7
これは、「コーヒーを注文して待っている間にレポートが完成する」レベルの速さです。
Cerebras:「力技」で問題を解決する世界最大チップ
なぜ「巨大化」を選んだのか?
2016年、元AMDエンジニアたちが直面した問題は「データの交通渋滞」でした。通常のチップでは、データがチップ間を移動するのに時間がかかります。これは高速道路の料金所で車が詰まるようなもの。
Cerebrasの解決策:「じゃあ、全部を1つの巨大なチップにして、料金所をなくそう!」
どれくらい巨大なのか?
サイズ比較:
中身の凄さ:
- トランジスタ数:4兆個(人類の脳細胞の40倍!)
- AI専用コア:90万個(小さな街の人口分)
- メモリ帯域幅:毎秒21ペタバイト10
これは、Netflixの全動画を1秒でダウンロードできる速さです!
実際に何ができるのか?
驚異の処理速度:
実用例:
- Mayo Clinic:癌研究や新薬開発のAIモデル開発
- AlphaSense:金融分析AIの高速化
- Condor Galaxy 3:64台を結合したスーパーコンピュータ13
特に「大量のデータを一気に処理したい」というニーズに最適です。
Groq:「無駄ゼロ」を極めた最速ランナー
なぜ「速さ」にこだわったのか?
2016年、Google TPUの開発者だったJonathan Rossは、AIの「待ち時間」にイライラしていました。「なぜコンピュータは考えるのにこんなに時間がかかるのか?」
彼の答え:「無駄な動きを全部省いた、100m走専用のスプリンターを作ろう」。こうして生まれたのがLPU(言語処理装置)です。
どうやって「無駄」を省いたのか?
簡単に説明すると、「工場のベルトコンベア」方式。
**通常のGPU:**レストランの厨房のように、料理が来た順に作る **Groq LPU:**工場のラインのように、全てが予め決まった順番で動く
結果:
実際に何ができるのか?
衣撃の速さ:ChatGPTの13倍高速化
- 通常のChatGPT:返答に10秒
- Groq使用:0.7秒で返答19
具体的なメリット:
- カスタマーサポート:即座に返答が来る
- ライブチャット:人間と区別がつかない速さ
- コード補完:タイピング中に即座に提案
採用企業: Dropbox、Vercel、Volkswagen、Canvaなど18
2025年初頭までに現在の約136倍(10.8万LPU)に拡張予定!
どれを選べばいいのか?簡単選び方ガイド
\各社を交通手段に例えると/
企業名 | 例えると | 強み | 弱み | 最適な用途 |
---|---|---|---|---|
SambaNova | 変形ロボット/バス | 柔軟性・マルチタスク | 初期コストが高い | 複数のAIモデルを使う企業 |
Cerebras | 巨大貨物船 | 大量データ処理 | サイズが巨大 | 研究機関・大企業 |
Groq | F1レーシングカー | 圧倒的速さ | AI学習は苦手 | リアルタイムサービス |
【こんな企業におすすめ】
SambaNovaを選ぶべき企業:
- ✓ 複数のAIサービスを提供したい
- ✓ 朝は画像生成、昼は文章生成など切り替えたい
- ✓ 将来的に新しいAIモデルにも対応したい
Cerebrasを選ぶべき企業:
- ✓ 医療・金融など大量データを扱う
- ✓ 独自の巨大AIモデルを開発したい
- ✓ 電力コストより性能を重視
Groqを選ぶべき企業:
- ✓ チャットボットやリアルタイムサービス
- ✓ 応答速度が最優先
- ✓ 電力コストを大幅に削減したい
【今後の展望】
2025年以降の未来予想:
- コストが下がり、中小企業でも導入可能に
- NVIDIAの独占体制が崩れ、選択肢が広がる
- 各社が特化した分野で棲み分け
3年後の未来: 「ChatGPTの応答が0.1秒で返ってくる」「スマホでも大規模AIが動く」こんな世界が当たり前になるでしょう。
これらの革新的なAIチップベンダーについて、さらに詳しく知りたい方のために、各社の公式情報を紹介します。
- SambaNova公式サイト - 製品詳細とアーキテクチャの技術文書
- Cerebras公式ブログ - CS-3システムの詳細解説
- Groq Developer Portal - LPUの性能ベンチマークとAPIアクセス
Sources
- SambaNova | The Fastest AI Inference Platform & Hardware - SambaNova公式サイト
- Cerebras - Cerebras公式サイト
- Groq is fast inference for AI builders - Groq公式サイト
- SN40L RDU | Next-Gen AI Chip for Inference at Scale - SambaNovaチップ詳細
- SambaNova RDU, reconfigurable architectures for inference, training, and agentic AI - Medium技術解説
- RDU: The GPU Alternative | SambaNova - RDU技術詳細
- SambaNova Unveils New AI Chip, the SN40L - プレスリリース
- Cerebras WSE-3: Third Generation Superchip for AI - IEEE Spectrum記事
- Cerebras WSE-3 AI Chip Launched 56x Larger than NVIDIA H100 - ServeTheHome分析
- Cerebras CS-3: the world’s fastest and most scalable AI accelerator - Cerebras公式ブログ
- Cerebras’ Third-Gen Wafer-Scale Chip Doubles Performance - EE Times記事
- Cerebras WSE3 Versus Nvidia B200 - NextBigFuture比較記事
- Cerebras Goes Hyperscale With Third Gen Waferscale Supercomputers - The Next Platform
- The Architecture of Groq’s LPU - 技術アーキテクチャ解説
- What is a Language Processing Unit? - Groq公式ブログ
- How Tensor Streaming Processor (TSP) forms the backend for LPU? - Medium技術記事
- Supercharging LLM Training with Groq and LPUs - DEV Community
- What’s Groq AI and Everything About LPU 2025 - Voiceflow分析
- Groq’s ultrafast LPU accelerator smashes AI LLM benchmarks - 311 Institute